関西学院創立百周年(1989年平成元年)に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されました。これを契機として、翌年『別冊 關學文藝』が誕生。以後年2回の発行を続け、関学文藝部OB以外の同人・会員も加わり、現在(令和5年11月10日)第67号を発行。 編集:浅田厚美 発行者=伊奈忠彦(同人代表)

2022年11月25日金曜日

  浅田厚美「メリーゴーランド」        (『季刊文科』90号 同人雑誌評) 

 『別冊關學文藝』第六十四号掲載 浅田厚美の小説「メリーゴーラン

ド」は『季刊文科』90号(令和4年 冬季号)に転載されましたが、

同誌の 谷村順一氏の「同人雑誌評」でも取り上げられています。



























(谷村順一「同人雑誌評ー依存と桎梏ー」)

浅田厚美「メリーゴーランド」(別冊關學文藝第六四号)は、主人公

波留が父親の死を看取った場面から幕を開ける。父親との永久のわか

れに、しかし波留のこころをとらえるのは悲しみでなく、集中治療室

のガラス窓に映る十年前に死んだ母親理恵の顔。もちろんすでにこの

世にいない理恵の顔が窓に映り込むはずはなく、それは波留自身の顔

なのだが、「二重顎と下降気味の頬。小判のような丸みのある輪郭。

吹き出ものだらけの皮膚」の「世界中でいちばん見たくない女の顔」

だった。理恵の相貌が、透明フイルムのお面のように自らの顔に貼り

ついていることに気づいた波留は背中に電気が走ったかのような衝撃

を受ける。窓に映った波留の顔に理恵が重なる冒頭の場面によって、

あわせ鏡のように、互いに影響をしあうことが避けられない不可分な

母と娘の関係があらかじめ示されているからだろう。このあたりの設

定がじつに巧みだ。








2022年11月15日火曜日

別冊關學文藝 第六十五号を発行しました。


















発行:2022年令和4年11月10日

編集人:浅田厚美

発行人:伊奈忠彦

       印刷所:銀河書籍 (有) ニシダ印刷製本

      表紙画:吉田純一   カット: 吉田純一 ・ 柴田 健



(創作)

かさぶたを剥がすように    浅田厚美

H子さんのこと        美馬 翔

くらげ             一藁英一

新街談録 (その        森岡久元

  

 (詩)

黄昏の逍遥 ー青島君とー       山添孤鹿

豚屋 / 裏庭                     中嶋康雄

               

(文学通信たまづさ)

足立巻一さん ー関西学院中学部の頃    たかとう匡子

やっぱり紙の本が好き                         杉岡  泰  

 

 (エッセイ)

「心の風景」~夕焼けという壁紙~        岡本三千代

おばあちゃんの時計                      桂未希

山寺便り  ひまわり                  岡村文夫

随想三昧 ~歌の世界に遊ぶ~       落山泰彦 

チベットの黒魔術                     石川 巌


(追悼の記)

《回想》 兄・松本道弘を偲ぶ                      松本篤弘


(ブログ)

「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)第25回   伊奈遊子(ゆうし) 

  

(追悼)

本誌、『別冊關學文藝』第六十五号は

和田浩明様、黒田宏様、名村峻様 の 追悼号となりました。

謹んで、ご冥福をお祈り申し上げます。



 

(編集後記)   浅田厚美  伊奈遊子

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同人の森岡久元氏が尾道新聞に寄稿されました。

『別冊關學文藝』同人で、数々の、尾道を舞台にした小説を発表され、

世評の高い作家、森岡久元氏が、11月5日の尾道新聞に寄稿されました。


















浅田厚美「メリーゴーランド」が             『季刊文科』冬季号に転載されました。

『別冊關學文藝』64号(5月25日発行)掲載の、

浅田厚美「メリーゴーランド」

文藝・学術出版 鳥影社11月15日発行の

『季刊文科』90号(令和4年 冬季号に、

転載されました。

創作(小説)
藤沢 周 鎌倉幽世八景〈5〉 飢渇畠
大鐘稔彦 医学と文学の間〈9〉 —一アウトサイダーの生涯―
松本 徹 乱雲の月―後光厳天皇の時代 南北朝は成立しなかつた
植木 智 街の記憶
杉 崇志 座頭転がし
寺本親平 アサギマダラ
中村徳昭 大蒜オーバーステイ
浅田厚美 メリーゴーランド





















2022年10月13日木曜日

『別冊關學文藝』第64号掲載の         浅田厚美「メリーゴーランド」が            『三田文学』No.151秋季号同人雑誌評に          取り上げられました。

 

























浅田厚美「メリーゴーランド」(『別冊關學文藝』第六十四号)

は父の死後、姉から相続など一切を任された主人公が苦労しながら

手続きを行う話です。かつては母にも姉にも似ていなかった主人公

が、年を追うごとに不健康な母に似ていく一方で、母に似ていた姉

が健康的にスリムになっていきます。容易に解決しがたい心のわだ

かまりが、主人公のやっかいな便秘と絡めて巧みに表現されます。

閉園してしまった遊園地のメリーゴーランドに特別に乗せてもらう

最後の場面は象徴的です。ままならない自身の体に戸惑いつつ、折

り合いをつけて生きてゆかねばならない人間の営みが淡々と語られ

る様子に引きこまれました。


2022年10月12日水曜日

『別冊關學文藝』第64号掲載の         浅田厚美「メリーゴーランド」が            神戸新聞同人誌評に取り上げられました。

 神戸新聞朝刊 同人誌評

   2022年令和4年9月24日(土)朝刊。




 


  物語は心の澱(おり)をどこまで描くことができるのだろう。

「別冊關學文藝」64号 浅田厚美「メリーゴーランド」。

 入院していた父が亡くなり、波留は姉志穂美と葬儀の手配を

する。10年前に死んだぽっちゃり体型の母と似ていた志穂美

は、いつのまにか捨てたように贅肉(ぜいにく)が消え、

身軽で自由に見えた。一方、波留は家族の誰とも似ておらず、

そのせいで自分はこの家の子どもなのだろうか、と疑問を持ち

続けてきたが、皮肉にも今では太っていた母に似ているのは

波留自身。

 生前、母も便秘に苦しんでいたと志穂美から聞き、波留は体

内を健康に保とうと努力するが、幼い頃から母や姉に否定され

続けてきたせいで、自分は健全な体に相応(ふさわ)しい存在

だろうか、と悩みもする。体内に溜(た)まった毒素はまるで

母親が波留に吐き続けた言葉の毒にも思えるのだった。

 家族の一員だと確信できる思い出の一つでもあれば波留の現

在は違っていたのだろうか。消えゆく家族への鎮魂のような

品だった。           (作家・葉山ほづみ)









同人:松本篤弘氏講演「世界の不思議ものがたり」

    9月30日(金)

『別冊關學文藝』同人 松本篤弘氏

「世界の不思議ものがたり」
 と題して講演されました。


  会場:北陵公民館
    (川西市役所北陵行政センター併設)
    (川西市丸山台1-5-2)
 
















 


2022年8月25日木曜日

『別冊關學文藝』第64号掲載の         一藁英一「銀色の遠景 萩子」が         大阪文学学校「小説同人誌評」に           取り上げられました。


『別冊關學文藝』第64号掲載、一藁英一「銀色の遠景 萩子」が

 大阪文学学校の「第34回 小説同人誌評」(評者:細見和之)に

取り上げられました。

※評者の細見和之氏は大阪文学学校校長。詩人。京都大学大学院教授。
 2020年に、詩集「ほとぼりが冷めるまで」(澪標)で第58回歴程賞受賞。

https://osaka-bungaku.sakura.ne.jp/wp/wp-content/uploads/2022/08/fa9999a24842fc2ce5d559b02a4f700c.pdf

https://www.osaka-bungaku.or.jp/ (大阪文学学校HP)


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 『別冊關學文藝』第64号では一藁英一「銀色の遠景 萩子」を味わ

い深く読んだ。

 五七歳の「私」は「萩子」というすこし年下の女性と有馬温泉に向か

って電車に揺られている。「私」は萩子が働いているクリーニング店で

彼女と出会った。預けたスーツに映画のチケットの半券が残っていて、

そこからときおり彼女と映画を話題にすることになり、二月後には好

きな映画へ一緒に出かけ、食事も行う仲になる。 お互いに離婚歴があ

り、いまはともにひとり身。そこで「私」は思いきって温泉旅行を彼女

に持ちかけたのである。乳癌の手術も受けたという彼女はとりあえず同

意してくれたのだが・・。

 その恋の顛末を描くことで、初老の男女の心の機微が、古風と呼べる

ほどに端正な文章で、丁寧に、また淡々と記述されている。

(細見和之)

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2022年7月12日火曜日

『別冊關學文藝』第六十四号 合評会

 別冊關學文藝第六十四号 合評会開催

日時:2022年令和4年 7月10日(日)
場所:大阪市立総合生涯学習センター 
     (大阪駅前第2ビル)

本年度、『詩集 無限抱擁』で現代詩人賞を受賞された
      詩人・倉橋健一先生が特別参加くださいました。
  
























写真をクリックしてください。全体が見えます。














2022年7月4日月曜日

奈良新聞  山添孤鹿『 詩集 南都憂愁』詩評 

   2022年令和4年7月1日(金曜日)     
     奈良新聞10面(文化頁)に
        詩人・文芸評論家 倉橋健一氏の特別寄稿        
  「詩評 山添 孤鹿『南都憂愁』について」  
       が掲載されました。

             





































詩集 南都憂愁(著者 山添孤鹿 別冊關學文藝同人

『詩集 南都憂愁』は、1940年生まれ、奈良市在住の山添孤鹿氏による作品集。平城宮址、大仏池、東大寺、薬師寺などの名所旧跡から、森青蛙、椋鳥、燕などの野鳥まで24の地元の題材を扱っている。A5版、上製本、本文104頁。21年12月、奈良新聞社刊。
















倉橋健一 詩評 (奈良新聞特別寄稿) 

山添孤鹿『南都憂愁』について

 『南都憂愁』(山添孤鹿)をそのまま額面通りに受け取るなら、今日の奈良にあって、失われつつあるいにしえの都の面影を愁い悲しんで、ということにでもなるだろうか。その点では、たしかに、和辻哲郎の『古寺巡礼』や堀辰雄の『大和路』などとは、接し方がひと味ちがう。
 作者は奈良生まれの今も奈良に住みつづける人であり、おまけに二十世紀アメリカ文学の研究者とあって、いわば内の人でありながら、たっぷり外界の空気を吸ってきた人である。そんな人が、二十世紀後半から二十一世紀へと相渉(あいわた)って、折にふれてじかに歩きながら、移りゆく古都にたいする、掛値なしの愛惜を注いだのが、この一冊といいうる。あえてレクイエム詩集といってよいと思う。
 冒頭の「東大寺南大門金剛力士像」を読む。この段階までは、私はこの詩集を、故郷人であることを信じて疑わなかった。ところがこの詩、終連にきて、〈写真機を、いじりながら 焦点が合わないと / 状況把握を疎(おろそ)かに〉と、苛立っている自分自身をそのまま覗(のぞ)かせる。こうなると、私のほうも先入観を捨てねばならなくなる。むしろ幼い時から培った、故郷と一体化した調和が失われていくことへの、痛烈な悔恨の情がテーマとして浮かびあがる。
 たとえば「椋鳥(むくどり)の怨嗟(えんさ)」では、天平の世にあって、良田百万町歩の開墾計画を立案するなどすぐれた能力を発揮しながら謀反の疑いをかけられ、死に追い込まれた長屋王の館があった地域に、いつのまにか警察本部が移ってきたことにたいする、ここを塒(ねぐら)に長く棲みついてきた椋鳥の嘆きがうたわれる。
 同じように「南都夕景色」では、高層住宅建設計画や大規模商店建設によって居場所を奪われる森青蛙が登場する。あるいは幼虫期にカマキリなどに捕食されて、逆にその体内で成虫になるという針金状の細長いかたちをした針金虫が登場する「宮址残影」など、こうなってくるともう南都憂愁の詩集名にひたってばかりにはいかない。変幻自在の形相さえ帯びる。
 ここまで来ると、私などはもう何いうともなく、戦前にあった日本的なものへの回帰を呼びかけた「日本浪曼派」を主導した保田與重郎などがかさなってきた。当時国家主義が奨励した古典の流行と結びついたために、戦後はいろいろ批判もされてきたが、そうではない。大和に軸足をおいて米づくりをベースにした祭りの生活に着目したのが、彼の思想の根底であった。言葉をかえれば、自然に逆らわずに自然に寄り添うところに、日本人の心性を見たのだった。
 そうでなくとも『俳句歳時記』など見て、よくもここまでまあと、その小まめさに思うことがある。たとえば「穴まどひ」など。晩秋になってもまだ穴に入らない蛇のこと。「冬の虫」「冬の蝶」「冬の蜂」など同じ類(たぐい)だが、日本人の自然に対する寄り添えかたは、とことんきめこまかくやさしい。この詩集に登場する小動物たちも、同じ位置に居る。
 その一方で、私は折口信夫の『死者の死』も思った。独自な古代回帰の幻想小説で〈したした〉〈こうこうこう〉など、オノマトペが霊界の声としてつかわれるが、「藤と三光鳥」など読んで三光鳥のとらえ方など見ていると、いつか『死者の書』にかさなっている自分に気づかされた。
 〈ツキー ヒー ホシー ホイ ホイ ホイ / ホイガイ イガイ ソウテイ イガイ イントク / ツキー ヒー ホシー ホイ ホラ ホイ ホイ / スウチ ウチウチ チッ チリ ホラ ホイ ホイ〉
 五連の全部。もともと三光鳥は神の使者で、三光とは月、日、星をあらわす。この鳥、すでに絶滅に瀕(ひん)しているという。とすれば、この連もあらかた察しはつこう。
 という具合でこの一冊、ふらふら持って歩いてガイドブックにするほど、やわな詩集ではない。現代詩集としても、奇観本といっていいほど、ユニークで魅力的な一冊に仕上がっている。                 (詩人、文芸評論家 倉橋健一)














 
 

 







2022年6月11日土曜日

落山泰彦「忍び音」

 同人:落山泰彦氏が    

『忍び音』を

発行されました。


 『忍び音』(非売品)

 発行人:落山泰彦(著者)

 発行日:2022年 令和4年5月25日

 編集人:伊奈忠彦

 表紙画:吉田純一

 印刷所:銀河書籍(有)ニシダ印刷製本































忍び音ー追悼三話ー

(一)紀行 ベトナムをゆく・・・・・(1)

     ー亡き妻を偲んでー

   2021年11月『別冊關學文藝』第六十三号より

(二〉人生の思い出・・・・・・・・・(41)

     ー亡き妻を偲びつつー

(三)正吉先生の思い出・・・・・・・(70)

     ー作家 織田正吉を偲んでー

   2022年5月『別冊關學文藝』第六十四号より

    






2022年6月1日水曜日

別冊關學文藝 第六十四号

 発行:  2022年令和4年 5月25日

       印刷所:銀河書籍 (有) ニシダ印刷製本

      表紙画:吉田純一   カット: 吉田純一 ・ 柴田 健





















(創作)

メリーゴーランド      浅田厚美

売り逃げ           美馬 翔

銀色の遠景 萩子      一藁英一

きらめぃて                    知鬼遊仁

アイドル映画 ワン・ツー・スプリング 0       松村暢 

新街談録 (その5)     森岡久元

  

 (詩)

テレジンの蝶          森 清

白毫寺村墓地の榎         山添孤鹿

髑髏                                                中嶋康雄

               

(文学通信たまづさ)

関学文芸部の新たな一歩                  宮崎加南子

中村哲医師追悼写真展を終えて           西出洋文  

 

 (エッセイ)

天神堂甲梅の講談日記(四)           天神堂甲梅

私の芭蕉布物語                      岸本千賀子

山寺便り  施餓鬼                岡村文夫

65歳                    桂 未希

感ずるところあり 墓参りの日々 断捨離 福井貞孝

随想三話                             奥喜代孝 


(ブログ)

「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)第24回

                伊奈遊子(ゆうし) 


(追悼の記)

正吉先生の思い出 ー作家・織田正吉を偲んでー  落山泰彦

母・松本房枝の遺言   ー総会屋の女房ー         松本篤弘

  

(文芸トピックス)

 

(編集後記)   浅田厚美  伊奈遊子

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