関西学院創立百周年(1989年平成元年)に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されました。これを契機として、翌年『別冊 關學文藝』が誕生。以後年2回の発行を続け、関学文藝部OB以外の同人・会員も加わり、現在(令和5年11月10日)第67号を発行。 編集:浅田厚美 発行者=伊奈忠彦(同人代表)

2014年10月21日火曜日

別冊關學文藝 第四十九号

     





 
2014年平成26年11月1日発行

編集人
 浅田厚美  発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健)

創作
小津好み          (名村 峻)
父と南天          (浅田厚美)
父の命日          (和田浩明)
異母兄弟          (石川憲三)
赤いさざんか        (大森裕子)
銀色の決断 第二部   (多冶川二郎)
怨の文字入りシャツの女 (森岡久元)

書評
思考する読書(VOL.9)最終回(今西富幸)


扉         (山添孤鹿) 
憑依譚      (松村信人)
砂         (中嶋康雄)
砂日和      (中嶋康雄)
少ないカエル  (中嶋康雄)

ブログ
「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第9回)(伊奈遊子(ゆうし)

追悼
大谷晃一さんを偲んで  (和田浩明)

エッセイ
138ページの本    (今西富幸)
小説とは人間交響曲である(多冶川二郎)   

文芸トピックス

編集後記  浅田厚美  松村信人
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神戸新聞同人誌評(野元 正・作家)

2014年11月29日(土曜日)記事



 単語「認知症」を使わずに編まれた、心に響く作品を主に選んでみた。

 「別冊關學文藝」49(大阪市中央区内平野町2の3の11の203・澪標内)
浅田厚美「父と南天」。高血圧と糖尿病の持病がある1人暮らしの父
の老いを、看護師でケアマネジャーの姉と交代で見守る「私」の視点
で描かれた、身につまされる作品だ。薬の飲み間違い、厳禁の饅頭を
電動車いすでひそかに買いに行く騒動、ヌード写真を介護スタッフに
見せる色呆けまがいの言動、畑仕事もせず閉め切った暗闇の家に閉じ
こもる日常、探し物に癇癪を起こし突然の激怒、傾聴ボランティアに
「ヒマな奴もおるもんや」と嘯(うそぶ)くなど姉妹を悩ませ続ける。
 そんなとき、私は近所の人が人形づくりで使う縁起物の南天の枝を
父に頼むと父は指から血を滴らせながら畑の南天の枝を剪(き)り続
けたー。
 さり気なく淡々とした筆致で、悩ませながらも父を思う娘の気持ち
が滲む好短編だ。







小説同人誌評

細見和之 『樹林』(平成27年8月1日号)
 
  「別冊關學文藝」49号掲載の、名村峻「小津好み」はいつもながら
手がこんでいる。冒頭、Sと「ワタシ」がSの自宅の近くにある小津安二郎の
墓を訪れる場面からはじまるが、小津の墓や映画をめぐって「ワタシ」と
言葉を交わすそのSはじつはすでに死んでいる、という設定なのである。
 そこから、SとさらにIとの交友の回想に入ってゆく。「ワタシ」は一緒に
仕事をしてきたIからやはり仕事の関係で二十年前にSを紹介されたのだった。
年齢
(途中)
 
 
 
 
下記の添付ファイルは、

ブログ『柳葉魚庵だより』より。

『別冊關學文藝』第四十九号について紹介していただきました。

 






















 太極拳の師・伊奈遊子さんから關学文藝49号が届きました。
さんは太極拳の方でも、忙しく活躍されていますが、熱心
な読家でもあります。今回は今年5月から8月までに読まれた
本の読感が書かれています。

 読書範囲は実に幅広く、高見順、大谷晃一、吉行淳之介、関川
夏央、川端康成、三島由紀夫他に及び、その読書力には驚くばか
りです。私も、学生時代には多くの小説や戯曲を読みましたが、
就職するとほとんど読まなくなりました。退職後、なぜか、昔読
んだ本が読みたくなり、読み返していると若かった頃が少し苦い
味とともによみがえってきました。あの頃、ああすればよかった
、こうすればよかったなどと、思うばかり。人生はその時にはわ
からないものなのでしょうか・・

 關学文藝49号には、名村峻氏の小説「小津好み」も掲載されて
います。名村峻氏の小説は映画と広告の世界です。「小津」とは
もちろん、「小津安二郎」。小津映画をこよなく愛する名村氏と
思われる主人公と北鎌倉に住む、今は広告界を退いた旧友が小津
の墓がある円覚寺を歩きながら旧交を温めますが、その後、主人
公は旧友がストーブの事故で大火傷を負ったことを知り、やがて
友の死の知らせを受けます。一方、主人公もジムからの帰途、転
倒して頭に大けがを負い入院します。
 知人の死や病気、そして自らの病気。体力の衰えから来る、若
い頃には考えられなかったような事故など老いは容赦なく誰にも
やってきます。日の残りをいかに生きるか、それこそが一番大切
なように思えますね・・。
 

       秋燕や旅立つ準備できたのか