関西学院創立百周年(1989年平成元年)に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されました。これを契機として、翌年『別冊 關學文藝』が誕生。以後年2回の発行を続け、関学文藝部OB以外の同人・会員も加わり、現在(令和5年11月10日)第67号を発行。 編集:浅田厚美 発行者=伊奈忠彦(同人代表)

2018年10月29日月曜日

別冊關學文藝 第五十七号

 


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2018年平成30年11月1日発行

編集人   浅田厚美  発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健)


創作  

霧立ちのぼる        (浅田厚美)
女嫌い(第三回)      (美馬 翔)
         
  
エッセイ
「なにが粋かよ」考           (名村 峻)
天神堂甲梅の講談日記(一)     (天神堂甲梅)
山寺便り「お盆」            (岡村文夫)
老いたる野球マニアの思い出      (和田浩明)



燕の塒入りの頃         (山添孤鹿) 
ガム              (中嶋康雄) 
駅舎               (中嶋康雄)
こぼれ地蔵            (中嶋康雄)
風船               (中嶋康雄)
大阪が揺れた日                           (松村信人)

               
ブログ
「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第17回)
                                               (伊奈遊子(ゆうし)


文学通信たまづさ
若き歌人の遺した歌 (犬養万葉記念館館長 岡本三千代) 
書名のこと      (編集工房ノア 涸沢純平)

                  
 
ノンフィクション
石や岩の奇談  続篇    (落山泰彦)
花の昇菊・昇之助         (森岡久元)

 
文芸トピックス
  
編集後記  浅田厚美  松村信人
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 神戸新聞朝刊

2019年平成31年1月26日土曜日掲載

同人誌評 野元 正・作家)

浅田厚美 『霧立ちのぼる』 評

 「別冊關學文藝」(大阪市中央区内平野町2の3の11
の202・澪標内)浅田厚美「霧立ちのぼる」。
百人一首がテーマの短編連作で55号から始まり今号の3
回目で完結。一つの場面を違う角度から描く。
 主人公は、この町に住まなかったら、カルタを一生やら
なかったと思う私。知り合った上垣内さんから年一回ある
町内チームのメンバーに誘われるのは同じだ。今号は又、
夫、特に美貌の母や私の心奥なども入念に書き込まれてお
り、秀逸だ。







 




 










2018年10月15日月曜日

蚯蚓鳴く 今宵はやけに 人恋し(落山泰彦作品集五)

 
 

 























(澪標) 2017年平成29年6月発行


老いてますます
落山流物語は今が旬
いよいよ完結篇

落山さんのドラマは、物語そのものもさることながら、
それに付けているひとつひとつの「この物語について」
が、圧倒的に独自に味わいをもっている。旅行による伝
聞、民話、書誌からのヒントがある以上、注釈を必要と
するのはやむをえないとしても、そこをなかなか緻密に、
手間暇かけるのをいとわず、自分の表現法をしても手の内
をつまびらかにするという態度で一貫している
                    (倉橋健一)

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落山泰彦 (これまでの著作)


へこたれず 枯野を駆ける 老いの馬:落山泰彦作品集(四)

花筏 乗って 着いたよ お伽の津  :落山泰彦作品集(三)

目に青葉 時の流れや 川速し    :落山泰彦作品集(二)
                            (2012年平成24年7月発行)

雲流れ 草笛ひびき 馬駆ける             : 落山泰彦作品集(一)
                          ( 2011年平成23年2月発行)




























大人が読んでも、
子供が読んでも楽しめる
童話・物語集

落山さんは作品として書き出すまでの一歩手前の
段階で、まず知った民話や伝説伝承の世界に対し
て、人一倍好奇心をたぎらせるという、奇妙な性
癖を持っている。性癖だが、これはまぎれもなく
物語作家としては、天分に近い必要条件だ。
(倉橋健一・詩人)















詩(うた)ごよみー岸本嘉名男詩集ー

(澪標)2018年平成30年9月発行 
























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岸本嘉名男 (これまでの主な著作)

『自叙伝風 うた道をゆく』
       2017年平成29年11月(発行形態:電子書籍)
『光いずこにー岸本嘉名男詩集』
       2017年平成29年10月(土曜美術社出版販売)
『うた道をゆく』
       2016年平成28年12月(土曜美術社出版販売)
『岸本嘉名男詩選集一三〇篇(コールサック詩文庫)』
       2015年平成27年5月(コールサック社)
『なぜ社会とつながるのか』
       2013年平成25年10月(土曜美術社出版販売)       
『わが魂(タマ)は天地を駆ー岸本嘉名男作品集』
       2012年平成24年4月(土曜美術社出版販売)
『文学の小径』
       2011年平成23年7月(日本文学館)
『白よー岸本嘉名男自選詩集二』
       2009年平成21年1月(近代文藝社)
『早春の詩風』   
       2008年平成20年3月(詩潮社)
『碧空のかなたに』
       2008年平成20年3月(檸檬新社)
『見つめつつ』
       2007年平成19年2月(北溟社)
『さすらい』
       2006年平成18年9月(日本図書刊行会)
『めぐり合い』
       2005年平成17年10月(思潮社)
『四季巡る』
       2004年平成16年6月(竹林館)
『釣り橋ゆらりー岸本嘉名男詩集』
       2003年平成15年10月(編集工房ノア)
『私の萩原朔太郎 改訂版ー(春秋新書)』
       2000年平成12年11月(竹林館)












2018年10月10日水曜日

似たような話:松村信人詩集


(思潮社) 2018年平成30年10月発行      
 
 
 
 真冬の房総の海に飛び込んだのだという
タカハシは本当に命を絶ったのだろうか
街中をひとり歩いていると
笑うタカハシたちであふれていた
 
関係性のうちにあって、作中
人物である他者と語り手の私
のあいだには、いつも交換可
能な魔の手があって、そこに
独特な内的緊張関係が妊まれ
ているということであろう。
ーーーーーーーー倉橋健一
 
 
虚構の手法を徹底させて、失
われたものに対する哀惜のよ
うなものも浮き彫りにする。
笑いも誘いながらサスペンス
風で妙なペーソスもあり、今
の現代詩には珍しいユニーク
な詩集と思う。
ーーーーーーーたかとう匡子
 
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2019年平成31年2月18日(月) 朝日新聞夕刊 

「倉橋健一の詩集をよむ」 に、

松村信人詩集『似たような話』から、「春」がとりあげられました。
 

 

 マキちゃんの憂うつ 漂う哀愁

 紹介の一篇、ごらんになったら わかるとおり、日々移ろいゆく市
にあって、ぽつんと取り残された老舗の薬局が舞台。マキちゃんと
あるからかわいい娘さんかなと思ったら、なんのことはない終わりの
ところで〈還暦を過ぎるまでとうとう独り身で〉とあって、老境に近
いオールドミスであることが知らされる。おまけに2階には寝たきり
の母親がいて2人暮らしらしい。
 古くからの知人をモデルにしたかたちの生活スケッチ詩のひとつ。
ただ、この詩、表向きののんびり感、侘しさ、倦怠感などの表情を
くずすちょっとした毒があって、その分、詩の振幅度を広くする。
中どのように移り変わろうとも、てこでも動くまいとする老舗の
固な憂うつがあって、作者はどうやらこちらに同情を寄せている点
だ。
 昨秋刊行の作者に取って15年ぶりとなる 第3詩集『似たような
話』から、ごく短い一篇を選んだ。作者は現在大阪の地にあって「澪
標」という詩集中心の出版社を営む。その経験もあってのことだろう
が、今日の激しい変貌を遂げる市場環境のなかにあって 、ひと旗あ
げようと目論見ながら、ついつい自分自身をもてあまして消え去って
しまう男ばかりが登場する。「笑うタカハシ」「怒るハセガワ」「匂
ナカガワ」「リュウの行方」など作品名からもあらかたの察しはつ
こう。妙なペースに溢れた今の現代詩にはとても珍しい詩篇。