関西学院創立百周年(1989年平成元年)に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されました。これを契機として、翌年『別冊 關學文藝』が誕生。以後年2回の発行を続け、関学文藝部OB以外の同人・会員も加わり、現在(令和5年11月10日)第67号を発行。 編集:浅田厚美 発行者=伊奈忠彦(同人代表)

2011年11月21日月曜日

海部洋三詩集 (海部洋三)


























(発行所=編集工房ノア)
2000年平成12年11月発行

 著者  海部洋三(かいべようぞう)
   『別冊關學文藝』同人



【収録詩集】

『鰯雲』 『干潟の風景』以後未刊行詩集

『干潟の風景』 
1985年昭和60年1月「編集工房ノア」刊

『置時計とカットグラス』
1960年昭和35年2月「六月社」刊

『湿度計』
1957年昭和32年4月「関學文藝」刊

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      海部洋三著『海部洋三詩集』表紙の帯コメント

                      風景に投影される

                   憂愁と倦怠、あるいは癒やし.

                われわれは この風景によって

時間の陰影、精神の摩滅がいかに美しいかを

的確に知ることができる・・・。 喜志邦三




























尾道物語 姉妹編 十八歳の旅日記 (森岡久元)





















(発行所=澪標みおつくし)
2010年平成22年9月発行
著者は『別冊關學文藝』『姫路文学』
『酩酊船』同人

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【 収録作品 初出誌 】


ストローハットの夏 『別冊關學文藝』第三十九号

ペリット          『別冊關學文藝』第三十二号

十八歳の旅日記   『別冊關學文藝』第四十号集





2010年10月2日(土)

山陽日日新聞に本書が取り上げられ

紹介されました。


森岡久元さん 頼山陽の「叫び」現代に

 尾道物語・姉妹編

 小説『十八歳の旅日記』上梓


    幼少期から青年期を尾道で育った作家、森岡久元さ
(東京都)が新しい小説集『十八歳の旅日記』を澪標
(大阪市)から上梓した。これまで刊行した「尾道物
語」の姉妹編で、自身10冊目の小説となる。
                   【幾野伝 
 自分に悩む男子高校生が少し不思議な体験から自信を
持とうとする青春物語「ストローハットの夏」、都会で
姉と弟のこれまた不思議な冒険ストーリー 「ペリット」
、表題作の「十八歳の旅日記」の3篇を収める。


 「十八歳の旅日記」は、尾道にもゆかりの儒学者で詩
の頼山陽(頼久太郎)が書き残している
絵日記「東遊
漫録」をめぐる物語。同じ探求心で集う男が、18歳
の時にめて広島から竹原、糸崎、尾道、神辺などを通
って江戸まで旅した山陽の心情を手繰り寄せながら、
こに秘められた青春の葛藤や真実に迫り、現代社会を焙
り出そうと試みた労作。

 1940年生まれの森岡さんは、母親の古里尾道に
4歳の時から暮らし、久保と土堂小学校、長江中、
尾道商業高校に学んだ。学当時、活発だった文芸部
の同人誌に小説を書たのが始まり。関西学院大学に
進学し、同人誌「姫路文学」に参画、本格的に創作
をスタートさせたが、卒業と同時に就職、その後、
会社を興して経営者になったことから、長年筆を休
んでいた。
  
 15年ほど前に休刊していた「姫路文学」が復
され とを切っ掛けに書くことへの情熱が再
湧き上がり、 ンピュータ関連部品の販売会社
トップを務めながら同人 誌などへの執筆を続け
いる。今回収載した3篇も同人誌 「別冊關學文藝」
に初出誌した作品。

 尾道での少年から青年期の体験、思い出をもとに描
『尾道渡船場かいわい』が2000年の第7回神
戸ナビー文学賞を受賞、その後も『ビリヤードわく
わく亭』『尾道物語・純情篇』『サンカンペンの壷』
『尾道物語・幻想篇』『恋ヶ窪』と毎年1、2冊ずつ
コンスタントに世に送り出している。

 後書きで「現代の少年たちと同様に、二百年前の頼
苦しんだ、心の闇からの叫びが秘められている
のではないかと。その隠された真実を推理しつつ、わ
たしの故郷である尾道をめぐる、現代の物語として書
きました」と森岡さん。電話での取材には、「会社の
仕事からも離れ、やっと自分の時間が持てるようにな
ったので、これからっと精力的に書いていきたい」
と話していた。 定価本体は1600円、啓文社各店に
も平積みされている。











恋ヶ窪 (森岡久元)

(発行所=澪標みおつくし)
2009年平成21年10月発行



著者は『別冊關學文藝』
『姫路文学』『酩酊船』同人







【収録作品 初出誌】

恋ヶ窪

『別冊關學文藝』第三十七号

神楽坂百草会
『別冊關學文藝』第三十八号

鹿児島おはら祭り
『酩酊船』第二十一集









尾道物語 幻想篇 (森岡久元)

(発行所=澪標みおつくし)
2008年平成20年10月発行



著者は『別冊關學文藝』
『姫路文学』『酩酊船』同人





【収録作品 初出誌】

奥の池のギンヤンマ

『別冊關學文藝』第三十五号

横綱が飛んだ、あの9月
『別冊關學文藝』第三十六号

まもるのアーチ
『姫路文学』第百十八号

先生の悔やみ状
書き下ろし

片隅の季節
『別冊關學文藝』第二十五号














2011年11月20日日曜日

サンカンペンの壷 (森岡久元)

(発行所=澪標みおつくし)
2008年平成20年1月発行



著者は『別冊關學文藝』
『姫路文学』『酩酊船』同人






【収録作品 初出誌】

サンカンペンの壷
『姫路文学』第百十六号
コンゴからのエアメール
『別冊關學文藝』第三十一号
新橋裏道のリリー・マルレーン
『姫路文学』第十七号
歌のゆくえ
『別冊關學文藝』第三十四号










尾道物語・純情篇 (森岡久元)

ビリヤードわくわく亭 (森岡久元)

(発行所=澪標みおつくし)
2004年平成16年4月発行



著者は『別冊關學文藝』
『姫路文学』『酩酊船』同人





【収録作品 初出誌】

ビリヤードわくわく亭
『別冊關學文藝』第二十四号
秋の手紙ー還暦のあなたへ
『姫路文学』第一一〇号
市ヶ谷左内坂
『姫路文学』第一〇七号
音がはずれてるよ
『別冊關學文藝』第二七号






尾道渡船場かいわい (森岡久元)

 



















(発行所=澪標みおつくし)
2000年平成12年11月発行
著者は『別冊關學文藝』『姫路文学』
『酩酊船』同人


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【収録作品 初出誌】

尾道の一番踏切
『別冊關學文藝』第二十号・第二十一号


おとぎ草紙をもう一度
『別冊關學文藝』第十八号


ふたたび祭りの日に
『姫路文学』第一〇六号


尾道渡船場かいわい
『姫路文学』第一〇四号・第一〇五号
※「尾道渡船場かいわい」は
  平成12年 神戸ナビール文学賞受賞

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ブック探検隊

家族のあり方について考えてみたくなる本。ストレスの多い時代に
ものの見方を変えて、気持ちを楽にしてくれる本。今月も選りすぐり
本をご紹介します。
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家族って何だろう
みんなで卓袱台を囲んだ「あの時代」。
夫婦別室もあたりまえの時代。
家族について考えてみたくなる本。
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ちゃぶ台を囲んでおじいちゃん、おばあちゃんも揃って夕食を摂
る・・そんな風景が当たり前だった時代がときどき懐かしく思
い出されます。核家族化が進んだ今日「家族」のかたち、「家庭」
の様子もずいぶん変わってきました。私たちの子ども時代を彷彿
とさせてくれる小説や現代を象徴する本を探してみました。
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『尾道渡船場かいわい』
 戦後10年、まだみんなが貧しかったころは、人との距離が近か
った。本書を読むと、貧しくとものんびりとした、そんな時代が目
の前によみがえってくる。

 「姉妹三人が縁台に座って、売れ残ったスイカやマクワウリを食
べるのが楽しみだった」(「尾道の一番踏切」ーー経済事情、住情
が許さなかった時代であるから、必然と大勢の人々にまみれての生
活である。その分たくましくもなった。
 「棒切れを振り回したたきあいをして、手足に打身や切り傷、擦
り傷は絶えなかったが、ふしぎに誰一人、怪我らしい怪我をするこ
とはなかった」(おとぎ草紙をもう一度)ーーー喧嘩はしても、ワ
ルガキどもでも、一定のルールは守っていた時代なのである。
 
 『尾道渡船場かいわい』は、「高須さん」が青年時代に書いた自
分の小説を見つけ、それを読み返しているうちに昭和三十年代の日
々がよみがえってくるという話。

 著者は四歳から一八歳までのもっとも多感な時期を広島・尾道で
過ごし、それがこの小説のベースとなっている。ノスタルジックな
描写もあるが、淡々とした筆運びや登場人物がさらに小説を書いて
いた、という重層的な手法が効果を奏し、時代がいきいきとよみが
えっている。その背景には『尾道」という町の地形的・文化的な特
徴も一役かっているのだろう。

 大阪と下関の中間に位置し、港町として早くから開けていた尾道
は、瀬戸内海に浮かぶ数多くの島々、背後に控える低い山々、その
中腹や山頂に立つ寺々の山門を持つ町で、江戸時代の文人、大田南
畝が立ち寄ったこと、志賀直哉の旧居があることでも知られている。
そんな故郷を想う描写は、その地に足を踏み入れたことがない読者
でも「訪ねてみたい」と思わせる。願わくば、佇まいが当時のまま
であらんことを。そうは願うものの、町の様子も変化してしまうだ
ろう。しかし、時代が移ろいでも変わらぬ感覚と想いがあることを、
この小説は教えてくれる。










花に背いて眠るー大田南畝と二世蜀山人(森岡久元)

崎陽忘じがたくー長崎の大田南畝 (森岡久元)

南畝の恋ー享和三年江戸のあけくれ (森岡久元)

 





発行所=澪標(みおつくし)
1999年平成11年発行
著者は「別冊關學文藝」「姫路文学」同人


【収録作品】

南畝の恋ー享和三年江戸のあけくれ
          『姫路文学』一〇一号、一〇二号
 天明狂歌師紀聞  『姫路文学』一〇〇号
 天明二年の大田南畝『姫路文学』九九号






2011年11月14日月曜日

別冊關学文藝 第四十三号















2011年平成23年11月20日発行

編集人 浅田厚美  発行人 松村信人

発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健)


創作
慕情(多冶川二郎)
連作パート(1)狼たちの挽歌 
連作パート(2)絶望という名の希望
連作パート(3)釜が崎ブルース
フォーチュン・クッキー(浅田厚美)
黒潮の歌(和田浩明)
秦准遊廓細見( 森岡久元)

書評
思考する読書(VOL.3)(今西富幸)

俳句
八月尽(川村文英)


愛別離苦(海部洋三)                
藤と三光島(山添孤鹿)
挽歌(松村信人)

エッセイ
万葉の歌碑を巡る 老生の明日香(第2回)(山口 毅)
パートナーシップ(竹内のぞみ)

ブログ
文学逍遥 伊奈文庫(第3回)(伊奈忠彦)

文芸トピックス(同人雑誌時評 ほか)

編集後記  浅田厚美  松村信人







2011年10月17日月曜日

夜離れ (和田浩明)

(発行所 編集工房ノア)
2001年平成13年7月発行


著者 「別冊 關學文藝」同人 







【収録作品初出誌】
『別冊関学文藝』 第18号~22号〔連載〕
平成十一年四月~平成十三年四月

『球乱』(和田浩明)


(発行所 編集工房ノア)
1996年平成8年7月発行


著者 「別冊 關學文藝」同人 








【収録作品初出誌】
球乱       『別冊關學文藝』第十一号
くらやみのなかで 『別冊關學文藝』第十号
師恩       『別冊關學文藝』第十二号
まぼろしの狼      『別冊關學文藝』第九号
 
 
 
 

奥付に記された 著者略暦】
一九三五年神戸生まれ。関西学院大学商学部卒。
高校、大学在学中より文芸部に所属し小説を発表。
一九九〇年NHKを退職。現在、大阪芸術大学教授。
「別冊關學文藝」同人。
著書『蛍のように』『夢のかけら』『旅のはじまり』
(以上編集工房ノア刊)  
『球乱』で第三回ナビール文学賞を受賞。











『旅のはじまり』(和田浩明)

(発行所 編集工房ノア)
1994年平成6年11月発行




著者 「別冊 關學文藝」同人 







【収録作品初出誌】

用件に非ず  『別冊関學文藝』第五号 
旅のはじまり    『別冊関學文藝』第六号
ふたたびの     『別冊関學文藝』第七号
白いページ     『別冊関學文藝』第八号改題 改稿










『夢のかけら』(和田浩明)


(発行所 編集工房ノア)
1992年平成4年9月発行


著者 「別冊 關學文藝」同人 







【収録作品初出誌】

喪中につき   『別冊関學文藝』 第二号 
こがねむし      『別冊関學文藝』 第三号
夢のかけら      『別冊関學文藝』 第四号改稿









2011年8月6日土曜日

『螢のように』(和田浩明)


(発行所 編集工房ノア)
1990年平成2年10月発行
  


著者 「別冊 關學文藝」同人 






【収録作品初出誌】
耳のかたち     『別冊關學文藝』 創刊号
音の風景について  『 關學文藝百周年記念号』
螢のように      書き下ろし


【帯(裏)に記された著者プロフィール】
和田浩明
一九三五年神戸市生まれ。関西学院大学商学部卒。

NHK大阪放送局勤務。昭和40年「ある夏・土佐にて」、
41年「十一時二分の海」で東京ラジオ・テレビ記者会賞、
同「アブストラクト」、44年「釣巡礼」で
文部省芸術祭ラジオ部門優秀賞を演出者として受賞。
48年「けったいな人びと」、
50年「おはようさん」、
51年「花くれない」など数多くの作品に従事。

二十八年間で三百本のドラマを演出する。










2011年5月24日火曜日

別冊關学文藝 第四十二号

































2011年平成23年5月20日発行

編集人 浅田厚美  発行人 松村信人

発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健)


創作
はづかし病(浅田厚美)
寒蜆(塩谷成子)
お別れ(和田浩明)
霧の中( 森岡久元)


ノンフィクション
忘れ得ぬ人たち(連載第三回)(多冶川二郎)


書評
思考する読書(VOL.2)(今西富幸)



枷 (海部洋三)                
瑠璃姫伝承ーはにかみ池古墳余聞ー(山添孤鹿)
晩秋(松村信人)


エッセイ
万葉の歌碑を巡る 老生の明日香(全篇)(山口 毅)
転任のエキスパート(竹内のぞみ)


ブログ
文学逍遥 伊奈文庫(第2回)(伊奈忠彦)


文芸トピックス(同人雑誌時評 ほか)

編集後記  浅田厚美  松村信人
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浅田厚美「はづかし病」が

第6回神戸エルマール文学賞を受賞しました!




「エルマール6号」(2012年11月発行)
に選考各委員の選評が掲載されていますので
転記させていただきます。

【島 京子】文章の明晰度
 大阪南部の村で、人の目や評判に縛られる生活をしていた、四十八
恵子が、ごく自然にみえる方法で村からの脱出をはかる。恵子の
心のこりは、十一人いる父方の従兄妹のうちの一人、五歳下の紗代だ。紗代は村の風習に忠実に生き、女子大の体育科に進む。ーーー
 まづ惹かれたのは文章の明晰度。複雑な村の人間関係、行動のすべ
恥づしいものとしているような”個”を書いて個性にした腕はたし
である。

     ・
 【大塚 滋】 文化の本質に迫る
 結婚して常識的な女性の幸福の道を歩んでいる恵子、学校の部活動
熱心で、しっかりと就職活動をして望みの会社に就職することに成
功した娘の文緒、そして、スポーツに熱中し、体育科に進み、独身の
まま、今は村の家に戻って母の介護をして過ごしている五歳年下の従
姉の紗代。 淡々とした文章のなかで、三人の性格や価値観の違いが
くっきりと描かれる。その中で、そこそこに化粧し、よい服装をして
、ごく普通の女性の生活を送っていることを「そんな恥ずかしいこと
きへん」と紗代に言われて恵子がひるむところで、読者も立ち止ま
る。化粧にても生活のありようにしても、男女を問わず個性が薄れ
ていくようなこんにち、紗代の言葉は意外に文化の本質に触れる問題
げかけてもいるようだ。深みのある、すぐれた小説だ。

     ・
【野元 正】さりげなく世情に問う
 主人公恵子は四十八歳、古い風習や因習が今も息づく農村で育ち、
古い共同体の中で何事にも優等生として振る舞うことを心がけ、ま
た期待されてきた。やがて同僚の教師と熟慮の末、結婚して村を脱
出した。夫婦仲のよい夫は校長就任。聡明な娘は大卒の就職氷河期
を乗り越え、第一志望内定を獲得する。恵子は地域の民生委員もし
ている。恵まれた環境で人生すべてが家庭的にも社会的にも順調だ
と自負していた。ところが幼馴染みの従姉の紗代は、体育系の大学
を卒業後、スポーツ用品会社に就職し、ゴルフインストラクター
し、お見合いもせず、結婚する気もない。そして紗代は会社も辞め、
太った身体ですべてが、〈衰退の予兆を示しているような暗い家の
中で〉なりふり構わず、認知症の父親と喘息の闘病を続ける母親の
介護に専念している。そんな紗代から、恵子は、〈満たされたい、
心の平穏がほしい、認められたい、命を繋ぎたい〉と人間の本能に
従って生き、しあわせそうに見える恵子の今を、下等で醜いことで
恥ずかしくないの? と見下される。これは現代社会において一見
しあわせそうに見える人生が、果たして充実したものかどうかを
えさせられ、世間の評価を気にして努力し、模範的に生きることは、
本当はとても恥ずかしいことではないのか、と力まずさり気なく世
情に問うている秀作といえよう。

       ・
【三田地 智】生き方を決めるものは何か
 世間の目を気にする村の仕組みに従って生きる。主人公の恵子はそ
ういう生き方を選び、一生懸命やってきた。しかし、心の奥では村の
価値観に違和感を持っていた。いつかは波風を立てずにこの村を出よ
うと考え、大学を出て教師になると、親や周囲から文句をつけられな
いような相手を選んで結婚し、平穏に村を出た。作者は、恵子の人生
の設定を周到に安定から成功へと巧みに描いている。対照的に五歳年
下の従姉の紗代は中学高校大学とバレーボールに熱中し、化粧や女の
子らしいお洒落を恵子が勧めても「そんな恥ずかしいこと」と嫌うば
かり。縁談もすべて断り、四十歳を過ぎた現在、両親の介護をひとり
引き受けている。民生委員もしている恵子が見かねてアドバイスをす
るが全く受け入れない。「なんであんたはそんなふうやの、このまま
でいいの?」と立ち入って言う恵子に「私は恥ずかしくてたまらん。
なんでわからへんの? けえこ姉ちゃんはかしこいのに」とじっと見
据えられ、恵子は衝撃を受ける。無理のない筆致で書き進み、鋭いア
ンチテーゼで締め括る作者の構成力、発送の面白さに感心した。結末
から誘発される多様な解釈もまた魅力。






下記の添付ファイルは、ブログ『柳葉魚庵だより』より。

『別冊關學文藝』第四十二号について紹介していただきました。



 
  伊奈遊子さんから『別冊關學文藝第42号』が届けられました。
 前号の第41号が届けられたのが、昨年の11月。それから約半年の間に、東日本大震災をはじめ、いろいろなことがあったようで、またあっという間のような気もします。
 伊奈さんは長年、太極拳の指導・普及にこつこつと努力されている傍ら、幅広い読書にも励み、書評をご自身のブログ「文学逍遥 伊奈文庫」に収められています。そしてその書評の一部がこの「別冊關學文藝」に掲載されています。
 椎名麟三、吉行淳之介、安岡章太郎、森敦、井上光晴などの往年の作家のほか、今回は南木佳士〈阿弥陀堂だより〉、西村賢太〈苦役列車)などの現代作家についても取り上げられています。
 「阿弥陀堂だより」は、私は寺尾聰、樋口可南子、北林谷栄出演、小泉堯史監督の同名の映画の方しか見ていませんが、山村に引っ越してきた夫婦の何気ない日常に心安らぐ思いのする佳品でした。今度、原作の方も読んでみたいと思います。
 また、『別冊關學文藝第42号』には、小説、詩、エッセイ、ノンフィクションなど幅広い作品が掲載されています。
 伊奈さんは自らの文学逍遥を「18歳の頃に帰るためにリハビリテーションのようなもの」と書かれていますが、定年退職後、読書を通じて、長い間遠ざかっていた青春時代を心の中に蘇らそうとする方も多いのではないでしょうか・・。
 団塊の世代には、これから、まだまだ長いかもしれない人生が待っていますが、どう過ごすか、それぞれ大変ではありますね・・。
 
  南側のカーテン揺らし夏の入る