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2016年平成28年11月1日発行
編集人 浅田厚美 発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)
表紙(石阪春生) カット(柴田 健)
創作
フランス刺繍 (浅田厚美)
落下する夕暮 (名村 峻)
クリーニング・ウォー (美馬 翔)
英国エリザベス女王の和風晩餐会 (多治川二郎)
真実の友情 (多治川二郎)
ゴースト (石川憲三)
詩
椋鳥の怨嗟 (山添孤鹿)
ごみくず (中嶋康雄)
シナモンスティック (中嶋康雄)
火傷 (中嶋康雄)
リュウの行方 (松村信人)
ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第13回)(伊奈遊子(ゆうし))
ノンフィクション
下手の横好き ~老いたる野球少年の思い出 (和田浩明)
エッセイ
五輪眼鏡 (塩谷成子)
新・街談録 (森岡久元)
文芸トピックス
編集後記 浅田厚美 松村信
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神戸新聞(2016年11月26日土曜日)掲載
同人誌評
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現実でも小説でもかけがえのない人との出会いが、その人の人生を
大きく変える。
「別冊關學文藝」53号:浅田厚美「フランス刺繍」。工務店社長の
龍平、千代夫妻が大阪高島屋の「フランス刺繍展」を見たことが
きっかけに、千代は刺繍に興味を持ち、体験教室などを受講。
千代には刺繍の才能があり、〈集中して集中した先に〉何かが
見えるという八木沢先生の見識を信じて龍平は千代を正式に
刺繍教室に入門させる。
ホテルの講座を卒業した彼女は、18世紀のウイーンの宮廷に
花開いた刺繍「プチ・ポアン」の愛好者が集う芦屋のサロンに通い、
やがて千代の刺繍は一目置かれる。龍平は千代が刺繍に集中
できるように、資材置場の刺繍部屋への改装や高校教師の三男
崇(たかし)の引きこもりの問題の解決などに奔走する。またフラ
ンスの刺繍学校に短期留学する八木沢先生に同行する千代は、
関西空港まで送った龍平に、「お父さんありがとうの言葉を残して
出発。龍平は深い満足感に浸り、パリで刺繍に専念する千代を思
い浮かべ、どんな困難をも乗り切れると思うー。淡い想いを秘めて
生きた女と、無理やり忘れた男の生きざまを巧みに描いた印象に残
る秀作だ。
(野元正・ 作家)
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