『別冊 關學文藝』

1989年(平成元年)関西学院創立百周年に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されたことを契機として、翌年『別冊 關學文藝』が誕生。文藝部OB以外の同人・会員も加わり現在に到っています。※発行所=「別冊關學文藝」事務局・第41号より澪標内   ※ 入力=伊奈忠彦『別冊關學文藝』同人・關學文藝部OB会会長(平成28年5月より、和田浩明前会長より引き継ぐ)                         『別冊關學文藝』購読会員(定期購読者)募集中。2年間前払計4冊分¥5000。詳しくは発行社:澪標 までお問合せください。

2017年1月5日木曜日

枯れ木に花を咲かせましょー文学逍遥 伊奈文庫




本の帯は、明日香村犬養万葉記念館館長   岡本三千代氏。

 
2015年平成27年10月発行
発行所:澪標みおつくし
著者 :伊奈遊子〈ゆうし) (別冊關學文藝 同人)
作品初出誌『別冊關學文藝』
第41号   第42号   43号   
44号    第45号        第46  
47号    48             第49号   
第50号  (第51号) 

 
第1回
『別冊關學文藝』第41号 2010年平成22年11月発行)     
第2回
『別冊關學文藝』第42号 2011年平成23年 5月発行)
第3回
『別冊關學文藝』第43号 2011年平成23年11月発行)
第4回 
 『別冊關學文藝』第44号 2012年平成24年 5月発行)
第5回
『別冊關學文藝』第45号 2012年平成24年11月発行)
第6回 
『別冊關學文藝』第46号 2013年平成25年 5月発行)
第7回
『別冊關學文藝』第47号 2013年平成25年11月発行)
第8回 
 『別冊關學文藝』第48号 2014年平成26年 5月発行) 
第9回 
 『別冊關學文藝』第49号 2014年平成26年11月発行)
第10 は
 『別冊關學文藝』第50号 2015年平成27年 5月発行)
及び又吉直樹「火花」について記述した部分のみ
 『別冊關學文藝』第51号 2015年平成27年11月発行)より採録。
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大阪府泉北ニュータウン地域の

コミュニティ紙「泉北コミュニティ」に

取り上げられた記事。









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又吉直樹などを取り上げた
読書ブログを本に
太極拳講師の伊奈さん
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 みずき台などで太極拳講師をしている伊奈遊子(ゆうし)さん
(本名は伊奈忠彦)が、長年つづってきたブログを本にした『枯
木に花を咲かせましょ/文学逍遥 伊奈文庫』を出版した。古希
迎えた”文学青年の伊奈さんが、夏目漱石、村上直樹などから
話題の又吉直樹まで、幅広い作家を取り上げてきた読書ブログの
エッセンスが詰まった一冊になっている。
 伊奈さんは関西学院大学卒業。在学中は文芸部に所属、禅秀夫
の筆名で小説を発表していた。定年退職後の08年、関学文芸部
OBが25年前に立ち上げた同人誌『別冊關學文藝』に参加。何
を書こうかと考えた時、思い浮かんだのが文学について改めて考
えてみる読書日記。そこで、ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」を立ち
上げ、そこに記した中で主だったものを同人誌に連載していくこ
とになった。
 今回出版の『枯れ木に花を咲かせましょ』は、この5年間に連載
したものをまとめた。同人誌の仲間が作品を何冊も世に問う活躍を
する姿に触発されてきた伊奈さんだが、昨年10月に肺がんの確率
が90%という告知を受けた(後にがんではないと判明)ことをき
っかけに、かねて勧められていた出版を決意。
 小説だけでなく、戦後詩人も取り上げる幅広い内容に加えて、漱
石臨終の様子など作家のエピソード、自身の作品にまつわるエピソ
ードも入れた。難しい文学評論のようにせず読みやすく、そして読
んでいなくてもその作品を詠んだ気にさせる内容になっている。
定価2800円+税。光明池の天牛書店で発売中。
問い合わせは出版元の澪標(みおつくし)06・6944・0869、
(浅利)
「泉北コミュニティ」(2016年平成28年1月21日発行)
 

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下記の添付ファイルは、

ブログ『柳葉魚庵だより』より。

『枯れ木に花を咲かせましょー文学逍遥 伊奈文庫

について紹介していただきました。

 



枯れ木に花を咲かせましょ

2015.10.17 Saturday

 太極拳の師、伊奈遊子さんが本を出されました。同人誌「別冊
學文藝」に掲載された10回分をまとめた文藝ブログには、
「枯れ木に花を咲かせましょ」という何ともユーモラスな伊奈さ
んらしいタイトルがついています。
 
 改めて読んでみると、小説はもちろんのこと、詩集、俳句、哲
学に至るまで、実に幅広く、深く読み込まれていて、しかも著者
からの抜粋や伊奈さんの案内が実に興味深いので、そんなに面白
い本だったのかと、新しい発見があって、推理小説のように、つ
いつい伊奈ワールドに引き込まれていきます。

 取り上げられているのは、私たち団塊の世代の青春が投影され
た作品が多く、読んでいると、読書に勤しんだ自らの学生時代な
どが思い出されて、何とも言えない気持ちになるのですが、アナ
ログとデジタルというか、つくづく今どきの若者青春とは隔世の
感があります。

 そしてまた、単なる評論ではなく、伊奈さんがブログを書かれた
時の夕刊の記事だとか、出来事とか、行動が織り込まれているの
で、期せずして数十年の伊奈版クロノジーになっています。

 その意味で、改めて「枯れ木に花を咲かせましょ」というタイト
ルを振り返ってみると、忘れ去られようとしている過去の文学の名
作たちに、花咲かじいさんのように、伊奈さんがスポットをあて、
花を咲かせている様子が浮かびます・・・。

父帰る栗ご飯ほのかに香る









 
 










 

2017年1月3日火曜日

我が道を往く
























2015年平成27年9月発行
発行所:澪標みおつくし
著者 :多治川二郎(別冊關學文藝 同人)
作品初出誌『別冊關學文藝』第37号第38号に連載
   (第37号 2008年平成20年11月発行)     
    (第38号 2009年平成21年    5月発行)      
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2009年9月7日、著者と本作品の紹介が

「大阪日日新聞」に掲載されました。


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連載特集:「街を奏でる人」

人間救済の思い込め 

企業経営から文筆の道へ

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 外食産業などを中心に数多くの事業を起こし、35歳ですでに20
ほどを経営。40代には当時珍しかったシチュー専門のレストラン
を開き、大阪、東京などに10店舗、展開させたこともあった。
 
 「既成概念を壊し、人がやっていないことをするのが身上」。実現
はしなかったが働く人も宿泊者もすべて女性のホテルを企画した。持
ち前の発想力を生かして、企業コンサルタントを無料でしていたこと
もあった。

 しかし、企業家としては60代後半から徐々にリタイア。高校から
大学まで注力してきた文筆の道に入った。新たな舞台でのテーマも「
既成概念の破壊。文章が美しい作家も今はいるが、冒険しているとな
るとどうだろうかと思う」。

 この4月、原稿用紙1千枚に及ぶ「我が道を往く」を完成。母校で
ある関西学院大OBらでつくる雑誌「別冊關學文藝(かんがくぶんげ
い)」の37号と38号に掲載した。
 
 内容は主人公・田宮吾郎が終戦直後から現在まで、さまざまな人と
の出会いを繰り返し成長していく物語。多くに事業を手がけていく姿
は多治川さん本人と重なる。
 
 初恋の女性でヒロインの杉崎凛子をはじめ、多くの女性が登場し、
恋愛小説としても読める。また時代時代の様子が事細かに描かれ、
一人の青年の姿を通した歴史の流れも垣間見える。
 
 「何か自分のことをまとめていこうと考えたのが執筆のきっかけ。
これだけ長い作品を書けるのも最後だろう。主人公・吾郎と凛子の
生き方を通して、人間救済の思いを込めた」と話している。

  福島区海老江、75歳。









 

2016年11月20日日曜日

別冊關學文藝第五十三号

 

 


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2016年平成28年11月1日発行

編集人   浅田厚美  発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健)




創作  
フランス刺繍              (浅田厚美)
落下する夕暮               (名村 峻) 
クリーニング・ウォー           (美馬 翔)
英国エリザベス女王の和風晩餐会               (多治川二郎)
真実の友情               (多治川二郎)       
ゴースト                  (石川憲三)
         
  

椋鳥の怨嗟               (山添孤鹿) 
ごみくず                   (中嶋康雄)
シナモンスティック             (中嶋康雄) 
火傷                        (中嶋康雄)
 リュウの行方               (松村信人)

 
ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第13回)(伊奈遊子(ゆうし)


ノンフィクション
下手の横好き ~老いたる野球少年の思い出   (和田浩明)


エッセイ
五輪眼鏡                    (塩谷成子)
新・街談録                (森岡久元)
 
文芸トピックス
  
編集後記  浅田厚美  松村信人
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同人誌評 野元 正・作家) 

神戸新聞(2016年11月26日土曜日)

掲載

 実でも小説でもかけがえのない人との出会いが、その人の人生を
大きく変える。
「別冊關學文藝」53号:浅田厚美「フランス刺繍」。工務店社長の
 龍平、千代夫妻が大阪高島屋の「フランス刺繍展」を見たことが
きっかけに、千代は刺繍に興味を持ち、体験教室などを受講。
千代には刺繍の才能があり、〈集中して集中した先に〉何かが
見えるという八木沢先生の見識を信じて龍平は千代を正式に
 刺繍教室に入門させる。
 ホテルの講座を卒業した彼女は、18世紀のウイーンの宮廷に
花開いた刺繍「プチ・ポアン」の愛好者が集う芦屋のサロンに通い、
やがて千代の刺繍は一目置かれる。龍平は千代が刺繍に集中
できるように、資材置場の刺繍部屋への改装や高校教師の三男
崇(たかし)の引きこもりの問題の解決などに奔走する。またフラ
ンスの刺繍学校に短期留学する八木沢先生に同行する千代は、
関西空港まで送った龍平に、「お父さんありがとうの言葉を残して
出発。龍平は深い満足感に浸り、パリで刺繍に専念する千代を思
い浮かべ、どんな困難をも乗り切れると思うー。刺繍に熱中する妻の
才能を引き出すことにかける夫の心理描写や夫婦愛が繊細な感性で書き込まれた好短編だ。

2016年4月21日木曜日

別冊關學文藝第五十二号








2016年平成28年5月1日発行

編集人   浅田厚美  発行人 松村信人

発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)

表紙(石阪春生) カット(柴田 健



創作
埋門(うずみもん)           (森岡久元)
ビアトリクス・ポター・マニア(三)  (浅田厚美)
叔父たちの戦争            (名村 峻)
 武士に二言なし(私の見合い結婚)後篇 (美馬 翔)
課長は仕事がお好き         (石川憲三)
円空、慈愛を彫る           (江竜喜信)
    

巫(かんなぎ)伝承          (山添孤鹿) 
カラス                (中嶋康雄)
沼の家                (中嶋康雄) 
徒労                 (中嶋康雄)
余熱                 (中嶋康雄)
白蝶                 (中嶋康雄)
 春                    (松村信人)

 
ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第12回)(伊奈遊子(ゆうし)


ノンフィクション
三たび さゝやかな放送ウラばなし   (和田浩明)


エッセイ
獏枕(ばくまくら)             (塩谷成子)

 
編集後記  浅田厚美  松村信人
 

同人雑誌時評 野元 正) 

神戸新聞(2016年5月28日土曜日)掲載

 『別冊關學文藝』52(大阪市中央区内平野町2の3の11の
203澪標内)浅田厚美「ピアトリクス・ポター・マニア(三)」。
この作品も15年から(一)(二)と連載された。英会話や宿泊
の予約など出発準備、一人旅の経緯、私立高校の事務職員朋子を
何かと励ますディビット先生のことなどが、期待と不安をない交
ぜに語られる。
 
 今号は、出発・現地編。独身の朋子は2年前に友だちと行った
英国湖水地方の旅が忘れられず、「ピーターラビット」の英国絵
本作家ピアトリクス・ポターに憧れ、マニアに近い朋子は日本在
住のディビットと互いに高まる恋情と閉鎖的な故郷の村からつか
の間の逃避行を意識しながらポターゆかりの地を滞在型の一人旅
で巡る。鉄道の旅、ポターの生家、草原に家々が点在する「ポス
トオフィス・メドウ」、偶然見つけた「ピアトリクス・ライブラ
リー」などが感性豊かな筆致で描かれている。いよいよ帰国。朋
子はディビットの求愛を受け入れる決心をしていたー。優れた紀
行小説であり、ポターの優れた手引書とも言える。
 
 
 
 

同人誌評
小説同人誌評 「書くことの意味」  
細見和之 『樹林』(平成28年8月1日号)
 今回はベテランの作品に力作が多い印象だった。その代表は『別冊關學文藝』第52号掲載の、森岡久元「埋門(うずみもん)」。江戸時代、中期の後半あたり、天明八年(七八八年)に、江戸の日本橋小伝馬町、小伝馬町牢屋敷で死罪に処せられた一組の男女の物語である。
 女の名前は「おつる」。二十三歳のたばこやの女房であり、一方、男の名前は「庄次郎」で三十才あまり。「牢抜け」(脱獄)した庄次郎をかくまったというのがおつるの罪である。堅気の女房であったおつるは、湯屋で窃盗の罪を犯し入牢する。そこで、やはり未決囚として入牢し、牢名主の立場にあった庄次郎とほのかな出会いを遂げたのだった。
 やがて「過怠牢」と呼ばれる五十日ないし百日の入牢ののち、おつるは娑婆に出るが、ある日、庄次郎が見事に脱獄を果たし、たばこ屋のおつるに会いに来る。そこから二人のめくりめくような逃避行がはじまる。その二人のあとを、まるで踵を接するようにして北町奉行所の鋭敏な同心が追いかける・・・・。
  四百字詰め換算百二十枚ほどの作品だが、どの場面もじつに生き生きとしている。しかし、この小説はたんなるフィクションではなくて、実際の記録にもとづくものの
ようなのである。最初のほうに、語り手「わたし」が伝馬町牢屋敷の平面図を見ていて「埋門」というものを見つけ、それが実際にどのような門であったかを知ろうとしていくつかの文献にあたり、そのうちの一冊『牢獄秘録』のなかで、おつると庄次郎の記録に出会った、と記されているからだ。ただしその記録はわずか二ページのものだったという。そこから、他の文献や記録にあたることで、筆者はこの物語を綴っていったようなのだ。牢屋のなかの制度と習慣、そこでの人間関係、おつるが従事していた当時のたばこ屋の様態、二人の逃避行の道筋と奉行側の対応など、じつに克明で迫真的なのだ。
  いや、ひょっとして『牢獄秘録』という記録書自体がフィクションかもしれないと思えてきて、インターネットで調べてみると、国会図書館のデジタル・コレクションの一冊として、ダウンロード可能なのだった。それを見ると、確かに「大宮無宿大次郎御仕置の事」という項目で、ここに描かれている二人についての記述がある。分量は二ページ半。ただし、作中で「庄次郎とされている名前は項目タイトルのとおり「大次郎」であり、たばこ屋の女房のほうにいたっては、この記録では「名は逸す」とだけ書かれていて、実際の名前は登場しない。たばこ屋の女房のほうは名前までが忘却されている。実際、この「名は逸す」の文字は『牢獄
秘録』の記録を読んでいて、じつに切ない箇所なのだ。つまり、作者はその女房に「おつる」という明確な名前を与えることで、二人の物語をあらためて復元したのである。
  そこで獄死した無数の、文字どおり無名の死者たちに名前を与えること----。それはもとより、たんに名前を具体的に付与することに尽きるのではない。何よりも、それはこのように物語ること、二人の生涯にくっきりとした輪郭を与えることによって果たされるのだ。あらためて「埋門」というタイトルが強い意味を帯びて迫ってこざるをえない。無数の人々の、名前も事跡も埋めている門である。小説というものの意味を強く考えさせてくれる力作だった。 
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詩時評  
松本衆司 『樹林』(平成28年8月1日号)
 『別冊關學文藝』第五十二号を読む。二〇〇頁を超える文芸誌の大半は創作やエッセイイだが、詩もある。松村信人氏の「春」を引く。
 
     
   マキちゃんはカウンターに俯せている  / 半年後には百周年を迎えるという 
    / 老舗の薬局もこのところ客足が途絶えがち / 隣の銭湯の跡地には  /
    高層マンションが建った  /  土地の権利や工事の騒音とかで長い間揉めて
   きた   /  建つには建ったマンションに人の気配はない  / 向かいの弁
   当屋が廃業し  /  コンビニが出来た  /  馴染みの電気屋や家具屋も 
    /  いつの間にか姿を消し  /  真新しいテナントビルが姿を現した  
    /  マキちゃんはカウンターに俯せたままだ  /  前の通りを見知らぬ人
    たちばかりが行き来する  /  一本の電話もかかってこない  /  還暦
    を過ぎるまでとうとう独り身で  /  三代目の暖簾を守ってきたというのに
    /  二階の部屋の奥から  /   寝たきりのオカンが呼んでいる  
           
  
 生きる意識も生活習慣も違う。そんな他者の町になった場所のカウンターで、「マキちゃん」は「俯せている」。かつて老いることは豊かな経験を伴った成熟だった。ただ美しい「春」を信仰する現代人に想像力は乏しい。これこそが現代社会の深刻なテーマだ。





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下記の添付ファイルは、

ブログ『柳葉魚庵だより』より。

『別冊關學文藝』第五十二号について紹介していただきました。

太極拳の師、伊奈遊子さんから、別冊關學文藝(第52号)が届きました。伊奈さんは、広告代理店在職中にクライアントから太極拳を勧められ、太極拳を極められた後、伊奈教室を始められ、鉱脈を掘り当てられたような充実した第2のキャリアを送られています。第2のキャリアの中には、執筆活動も含められています。「伊奈文庫」からの採録も、もう12回目になります。今回採り上げているのは、「パルタイ」の倉橋由美子、関学の先輩で夭折した天才詩人の吉田駿介、北杜夫の「少年」、「松山市教育委員会編」の「伝記 正岡子規」です。とくに「伝記 正岡子規」は参考になりました。
そして、昨年末開かれた伊奈遊子作「枯れ木に花を咲かせましょ」出版記念パーティでは、伊奈さんは没後36年の先輩詩人、吉田駿介さんの詩集「それからいくどもいくども昼と夜が」を朗読されたとか、これをみても、別冊關學文藝が若き日の文学への情熱をいかに長く持ち続けている歴史ある同人誌かがわかります。
別冊關學文藝(第52号)には、名村峻氏の「叔父たちの戦争」
が載っています。図書館に残された叔父の戦争体験記を取り寄せ、
その頃の日々を思い出し、叔父たちの戦争を追体験する。そこに
は血の繋がった肉親、親類にしか感じえない、生々しさがありま
す。そして、私たちは、やがてその戦争の影さえ見失ってしまう。
そう著者は警告しているのかもしれません。
 ところで、先日、TVで「ALLWAYS三丁目の夕日」の山
崎監督が最先端のCGの映画監督だと知りました。セットの様子
も映しましたが、そういうわけで、ほとんどセット=ブルーシー
ト、つまり、山崎監督は何もないところに、戦時を描いたのですね。
びっくりしました。しかし、伝統工芸が失われていくにつれ、もの
つくりにおける人間の手の大切さを思います。叔父さんたちが、何
一つ機械も使わず、文字通り手作りで描いた戦争と、CGが描く戦
争、人間の手と頭脳がつくる新たな未来に期待したいです。
 
   叔父たちの戦争今年もあの夏が来る
 
 
 
 












 

 
 

2015年11月2日月曜日

別冊關學文藝 第五十一号

 

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2015年平成27年11月1日発行

  • 編集人浅田厚美  発行人 松村信人
  • 発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)
  • 表紙(石阪春生) カット(柴田 健)


創作
ロング・ウェイ・ホーム       (名村 峻)
天皇の浜焼き鯛ー尾道少年の戦後絵日記からー
                  (森岡久元)
ビアトリクス・ポター・マニア(二) (浅田厚美)
要望書               (石川憲三)
武士に二言なし(私の見合い結婚)前篇(美馬 翔)
我が人生に悔いはなし        (多冶川二郎)



幻                 (山添孤鹿) 
蚊柱                (中嶋康雄)
光る自動販売機の夜のこと      (中嶋康雄)
果糖                (中嶋康雄)
海                    (松村信人)

 
ブログ
「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第11回)(伊奈遊子(ゆうし)
 

ノンフィクション
さゝやかな放送ウラばなし(続)    (和田浩明)


エッセイ
落ちても偶像               (塩谷成子)
 
 
編集後記  浅田厚美  松村信人
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下記の添付ファイルは、

ブログ『柳葉魚庵だより』より。

『別冊關學文藝』第五十一号について紹介していただきました。


太極拳の師、伊奈遊子さんから、別冊關學文藝(第51号)が
届きました。
 別冊關學文藝は、關學文藝部OBを中心とした同人誌。198
9年(平成1年)関西学院創立百周年に『關學文藝 100周
年記念特別号』がOBにより発行され、これを契機として『別
冊關學文藝』が誕生したとか。現在すでに51号を数えます。
 
小説、詩、エッセイ、ドキュメンタリーの他、伊奈遊子さんの
ブログ「文学逍遥  伊奈文庫」再録(抄)第11回が載っていま
す。尚、伊奈さんは先頃、ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(
抄)の10回分を纏めて、「枯れ木に花をさかせましょ」とし
て、上梓されました。今回取り上げているのは、又吉直樹「火
花」、小野十三郎詩集、三島由紀夫少年詩及び「近代能楽集」な
どです。特に又吉直樹「火花」が気に入られたようで、芥川賞を
取る前に本屋で出会った時からをブログに取り上げておられます。
そして又吉直樹の「火花」を久々に登場した無頼派文学の小説と
言っています。次作でどんな無頼の世界を描くのか、私も楽しみ
です。
 また、伊奈さんは25年前に、新神戸オリエンタルホテルで蜷
川幸雄演出の「近代能楽集」の中、「卒塔婆小町」と「邯鄲」を
観劇されているとかで、学生時代から、広告代理店勤務時代、現
在に至るまで、太極拳だけでなく、文学に対する情熱も持ち続け
られたようですね。

 第51号には、名村峻氏の小説「ロング・ウェイ・ホーム」も
掲載されています。高校時代の同級生の女性から「突然のことで
申し訳ありません。ご連絡をいただきたいのが・・」とだけ書か
れたハガキが届くところから、物語は始まります。ハガキに呼び
寄せられたかのように、突然帰省し、小京都と言われる裏日本の
その市に今も住む同級生と会うことになった主人公。それは遠い
昔の高校時代への思い出の旅でもあったのです・・。百人一首か
た取りの世界が展開され、名村峻氏の上質な、抑制のきいた大
の色気の世界を感じました。

「落ちても偶像」「我が人生に悔いなし」「ささやかな放送ウラ
ばなし」「武士に二言なし」「要望書」・・等々、面白く読ませ
ていただきました。

 
   冬晴れを走り出したる猿の年