発行所=澪標(みおつくし)
2012年平成24年8月発行
著者は『別冊關學文藝』『姫路文学』
【 初 出 誌 一 覧】
三原まで『姫路文学』第一二一号 (平成21年2月)
二月の岬
『酩酊船』第二七集(平成24年4月)
あびこ物語
『別冊關學文藝』第三三号(平成18年11月)
隠れ里の記
『姫路文学』第一二五号(平成24年5月)
富士見橋の理髪店
『姫路文学』第一二四号(平成23年8月)
尾道のラーメン
『別冊關學文藝』第三〇号(平成17年4月)
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2012年9月6日(木)
山陽日日新聞に本書が取り上げられ
森岡久元さん 離れて半世紀
尾道への望郷の念小説短編集『尾道旅愁編』を
森岡さんは母親の古里尾道に4歳から暮らし、久保小から土堂小、長江中、尾道商業高校に学んだ。在学当時、活発だった文芸部の同人誌に小説を載せたのが始まり。関西学院大学に進み、同人誌「姫路文学」に参画、熱心に創作したが卒業と同時に就職、その後起業し経営者になったことから、長年筆を休めていた。
休刊していた「姫路文学」が20年近く前に復刊したことを契機に、書くことへの情熱が再び湧き上がり、コンピュータ関連部品の販売会社のトップを務めながら執筆し、同人誌への寄稿を続けてきた。
江戸・天明期を代表する文人、大田南畝(おおた・なんぽ)の生き様を追う一方で、尾道での少年から青年期の体験、思い出をもとに書いた『尾道渡船場かいわい』が2000年の第7回神戸ナビール文学賞を受賞。その後も、『ビリヤードわくわく亭』や『尾道物語・純情篇』、『サンカンペンの壷』、『尾道物語・幻想篇』、『恋ヶ窪』、『十八歳の旅日記』と1、2年に1冊づつコンスタントに生み出している。
数年前に会社経営から退き、現在は執筆業に専念し、「姫路文学」と「別冊関学文芸」、「酪酎船」の各同人として作品を発表。半生記について今年6月には尾道市立大学で特別講義をした。
「人生というドラマの深淵を探る珠玉の短篇集」と紹介されている新刊『尾道物語旅愁篇』は、「三原まで」▽「父の紀行『二月の岬』」▽「あびこ物語」▽「隠れ里の記」▽「富士見橋の理髪店」▽「尾道のラーメン」の短篇6作品を収めた。いずれも2005年から今年春にかけて、各同人誌で初出ししたもの。
帯には「二月の岬」に寄せて、と関西学院大学名誉教授で詩人の山田武雄さんが「感傷を描きながら、これは作者の感傷ではなく、文中の父の若いときの思いであるという、第三者の視点から描いているかのようにして、巧みに読者を思いっきり『やるせなく』感じさせます。効果的にちりばめられた方言が、この思いとともに、読者をして若かった自分を振り返らせます。その背後に作者の感傷がたたずんでいるのです。内容、構成、文章ともに卓抜した優れた短篇です」と書いている。
あとがきで森岡さんは、「私の郷里は尾道です。郷里を離れていつしか五十年になりました。郷里を離れて暮らすものには、心のどこかに望郷の念があるものです。そして、都会に半世紀も定住しながら、かすかな旅愁に心がつねに晒されているもののようです。どれだけの時が経ようとも、郷里を離れたものは、旅人だからでしょう。
・・・・人はこの世に生まれ落ちたからには、所詮旅人で、どこで生まれて、どこで暮らそうとも、旅愁はついてまわるものでしょう」と記している。