2017年平成29年11月1日発行
編集人 浅田厚美 発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)
表紙(石阪春生) カット(柴田 健)
創作
おきまどはせる白菊の (浅田厚美)
女嫌い(第一回) (美馬 翔)
追悼 多治川二郎さん
多治川先輩を悼む (和田浩明)
偲 (塩谷成子)
人は思うまま生きればよい
行き先は釈尊ブッダがきめてくれる(飯塚修造)
多治川さんの長逝を悼む (神野一慶)
多治川二郎 略年譜&作品一覧
ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)
(第15回) 伊奈遊子(ゆうし)
詩
南都夕景色 ー琥珀の中の森青蛙ー (山添孤鹿)
面屋 (中嶋康雄)
拍手 (中嶋康雄)
エッセイ
映画俳優の死 (名村峻)
横綱とのさゝやかな思い出 (和田浩明)
『知と感性の対話』顛末記 ー出版を志したころ(松村信人)
新・街談録 (森岡久元)
文芸トピックス
編集後記 浅田厚美 松村信人
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神戸新聞朝刊
2017年平成29年12月30日土曜日掲載
同人誌評 (野元 正・作家)
浅田厚美 『おきまどはせる白菊の』 評
何かに思いを仮託して人生を生きる。同人誌の世界は、
限りなく読者を夢中にさせる。
「別冊關學文藝55 (大阪市中央区内平野町2の3
の11の202 澪標内)」。 浅田厚美「おきまどは
せる白菊の」。2児を育てるごく普通の主婦である私は、
現実世界から離れて小倉百人一首のカルタの世界に熱中
している。大阪南部の農村出身の私は小学校4年生のと
き、初めて百人一首を知り、百首暗記に夢中になり、「
おはこ」の「得意札」もできた。
顔見知りばかりの村からの脱出が願望で、結婚し晴れ
て大阪市内に住むことになる。そこは百人一首が盛んな
町。体内の歯車がカチッと動き出し、市内の大会に毎年
出るようになる。
ある年の奮戦を克明かつリアルに、そしてテンポよく
描写。特に惨敗した相手チームのリーダーは、青いアイ
シャドーパンチパーマ、ヒョウ柄の服を着ていたが、札
取りは鋭さと美しさにあふれ、品があった。なおかつ、
鮮やかラストが印象的!
一見、平凡な主婦のカルタ熱中物語のようだが、秀歌
だけではないといわれる百人一首の謎と相まってカルタ
に挑む私の気持ちや周辺の人間模様が巧みに描かれてい
る。読者はまるで臨場しているかのような気持にさせら
れる秀作だ。