関西学院創立百周年(1989年平成元年)に、關學文藝部OBにより『關學文藝 100周年記念特別号』が発行されました。これを契機として翌年『別冊 關學文藝』が誕生。以後年2回の発行を続け、関学文藝部OB以外の同人・会員も加わり、現在に至っています。2024年令和6年11月10日に第69号を発行。    編集:浅田厚美 発行者=伊奈忠彦(同人代表)

2017年5月23日火曜日

別冊關學文藝 第五十四号

































2017年平成29年5月10日発行

編集人    浅田厚美   発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)
表紙(石阪春生)    カット(柴田 健)
 
 
 
創作  
婆娑羅の母     (浅田厚美)
室津のキツネ       (森岡久元) 
雀蜂気分         (美馬 翔)
敗戦の日まで             (和田浩明)
孤老の世界      (江竜喜信)       
        
  

東大寺南大門金剛力士像体門(山添孤鹿) 
ソピー          (松村信人)
うそっぱち        (中嶋康雄) 
不在                                      (中嶋康雄) 
路地                     (中嶋康雄)
水飲み鳥                                     (中嶋康雄) 
枇杷の庭                                     (中嶋康雄) 

 

ブログ「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)

             (第14回)        伊奈遊子(ゆうし)


エッセイ
わたしの映画偏歴     (名村峻)
トランプタワー      (塩谷成子)
 
 
文芸トピックス
  
編集後記  浅田厚美  松村信人
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(2017年平成29年7月15日号)
「図書新聞」同人誌評(志村有弘

森岡久元「室津のキツネ」評 

森岡久元の「室津のキツネ」(別冊關學文藝第54号)が面白い。

室津の旅籠のあるじ野本仙山は、人をかつぐ癖があった。江戸から

長崎へ行く大田南畝が仙山の旅籠に宿泊することになり、南畝を尊

敬する仙山は、そのことを喜びながらも、室津のキツネが修験者を

誑かした話をし、修験者から貰った護符を見せ、その匂いを南畝に

かがせるのだが、それは仙山一流の人をかつぐ行動。軽妙な文章、


随所に見せる洒落が巧み

これも一つの名人芸というべきか。
 
 

 

神戸新聞

2017年平成29年7月29日土曜日掲載

同人誌評 野元 正・作家)

美馬翔 『雀蜂気分』 評


共働きの ひろ子は庭でスズメバチの巣を見つける。

駆除費用はこぶし大の巣で3万円という。夫の浩
は、家の問題はいつも人ごと。ひろ子は土、日に
は駆除を、と焦る。
 そんなとき、以前劇団に所属していた際にアパ
ートが同室で一番仲がよかった女性・芳香から公
演案内のはがきが届くが、嫉妬から破り捨てる。
ひろ子にも劇団で脚本家として自立していく夢が
あったが、子育てと劇団活動が両立できずに退団
した。芳香の公演にもたまには行きたいけど夫は
協力的でないと、断るつもりの電話でつい愚痴が
出る。
 スズメバチ駆除はある夜、芳香がバイクでやっ
て来て、要領よく処理した。殺さず山に返しに行
くというので、ひろ子は同行しビジネスホテルに
泊まる。ひろ子は、芳香の男女関係など思い出話
をするうちに、戯れの情事を仕掛けるが拒否され
たことで初めて、自立し生きる方向を見いだした
ような気分になるー。現代社会の女性の生き方に
灯明をともす好編だった。

浅田厚美 『婆娑羅の母』 評

 同誌の浅田厚美「婆娑羅の母」。婆娑羅という
母を演じる「疑似家族」がテーマの作品で印象に
残った。