編集人 浅田厚美 発行人 松村信人
発行所 「別冊關學文藝」事務局(澪標 内)
表紙(石阪春生) カット(柴田 健)
創作
怨の文字入りシャツの女 (森岡久元)
書評
思考する読書(VOL.9)最終回(今西富幸)
詩
扉 (山添孤鹿)
憑依譚 (松村信人)
少ないカエル (中嶋康雄)
ブログ
「文学逍遥 伊奈文庫」再録(抄)(第9回)(伊奈遊子(ゆうし))
追悼
大谷晃一さんを偲んで (和田浩明)
エッセイ
138ページの本 (今西富幸)
小説とは人間交響曲である(多冶川二郎)
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神戸新聞同人誌評(野元 正・作家)
2014年11月29日(土曜日)記事
・単語「認知症」を使わずに編まれた、心に響く作品を主に選んでみた。
「別冊關學文藝」49(大阪市中央区内平野町2の3の11の203・澪標内)
浅田厚美「父と南天」。高血圧と糖尿病の持病がある1人暮らしの父
の老いを、看護師でケアマネジャーの姉と交代で見守る「私」の視点
で描かれた、身につまされる作品だ。薬の飲み間違い、厳禁の饅頭を
電動車いすでひそかに買いに行く騒動、ヌード写真を介護スタッフに
見せる色呆けまがいの言動、畑仕事もせず閉め切った暗闇の家に閉じ
こもる日常、探し物に癇癪を起こし突然の激怒、傾聴ボランティアに
「ヒマな奴もおるもんや」と嘯(うそぶ)くなど姉妹を悩ませ続ける。
そんなとき、私は近所の人が人形づくりで使う縁起物の南天の枝を
父に頼むと父は指から血を滴らせながら畑の南天の枝を剪(き)り続
けたー。
さり気なく淡々とした筆致で、悩ませながらも父を思う娘の気持ち
が滲む好短編だ。
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小説同人誌評
ブログ『柳葉魚庵だより』より。
『別冊關學文藝』第四十九号について紹介していただきました。
太極拳の師・伊奈遊子さんから關学文藝49号が届きました。
伊奈さんは太極拳の方でも、忙しく活躍されていますが、熱心
な読書家でもあります。今回は今年5月から8月までに読まれた
本の読後感が書かれています。
読書範囲は実に幅広く、高見順、大谷晃一、吉行淳之介、関川
夏央、川端康成、三島由紀夫他に及び、その読書力には驚くばか
りです。私も、学生時代には多くの小説や戯曲を読みましたが、
就職するとほとんど読まなくなりました。退職後、なぜか、昔読
んだ本が読みたくなり、読み返していると若かった頃が少し苦い
味とともによみがえってきました。あの頃、ああすればよかった
、こうすればよかったなどと、思うばかり。人生はその時にはわ
からないものなのでしょうか・・
。
關学文藝49号には、名村峻氏の小説「小津好み」も掲載されて
います。名村峻氏の小説は映画と広告の世界です。「小津」とは
もちろん、「小津安二郎」。小津映画をこよなく愛する名村氏と
思われる主人公と北鎌倉に住む、今は広告界を退いた旧友が小津
の墓がある円覚寺を歩きながら旧交を温めますが、その後、主人
公は旧友がストーブの事故で大火傷を負ったことを知り、やがて
友の死の知らせを受けます。一方、主人公もジムからの帰途、転
倒して頭に大けがを負い入院します。
知人の死や病気、そして自らの病気。体力の衰えから来る、若
い頃には考えられなかったような事故など老いは容赦なく誰にも
やってきます。日の残りをいかに生きるか、それこそが一番大切
なように思えますね・・。
秋燕や旅立つ準備できたのか
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